上清水一三六の飛躍への暗躍

祝!ディープインパクト有馬記念優勝!!からもう1年・・・
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しばらく旅に出ます。
みなさまのおかげで上清水賞も無事幕を下ろすことができました。ありがとうございました。実は私、次回作の取材のため、しばらくホウエン地方へ旅に出ます。当面、記事の更新ができませんが、戻ってきたあかつきには、よりパワーアップした上清水をみなさまにお見せできると思いますので、よろしくお願いいたします。


上清水一三六
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by kamishimizu136 | 2004-10-13 11:49
第1回上清水賞結果発表
お待たせいたしました。
いよいよ第1回チキチキ上清水一三六賞、発表の時間がやってまいりました。
発表の前に、長い前口上におつきあいください。

今回参加された全20作品(のべ40人)は、いずれ劣らぬ力作ばかり。
しかも、作品のジャンルも多岐にわたっており、この中からたった1作の受賞作を決定するという審査作業は、非常に困難なものでした。

作品自体の優秀さは、甲乙付けがたい、というよりも本来、比べて優劣をつけられるようなものではありません。それはジャンルに優劣をつけることと同じですから。






だから、






全部優勝!











と、いきたいところですが、それではあまりに無責任。
単純に選者の好みで選ぶなら簡単ですが、好き嫌いだけで選んでは、それも本気で作品を投じてくださったみなさまに失礼です。

そんなわけで、受賞作を選ぶにあたって、上清水賞の審査基準を明確に設定しました。

作品の完成度を問うことは、もちろんです。
肝心なのは、それ以外の要素。
まず、「ミステリィが好きであり、ミステリィを書こうという情熱や強い意志、高い志が感じられるものであること」。

広い意味では、全作品、ミステリィでした。そして、スタイルが本格ミステリィでも、SFでも、お笑いでも、ホラーでも、それは関係ありません。
逆に現在のミステリィ界で勢いを増しつつある「他ジャンルとのハイブリッド化」を考慮すれば、異なるジャンルとの融合は歓迎すべきことでもあります。
上清水賞が考えるミステリィは「骨格がミステリィであること」です。
骨格がミステリィとして書かれているならば、装飾や演出部分はどんなジャンルの要素が入っていても問題ありません。
また、トラバボケ等の素晴らしい企画の数々に敬意を表し、トラバボケのタッグ版ではない、別の基準で評価したい、ということもありました。
なにしろ、上清水も激短も、トラバボケでも裏ボケでもチャンプになっておりません。
投票制を除けば、チャンプでもない人間がトラバボケ的な基準で審査をすることは、過去のチャンプにも、企画元のバントさんにも失礼にあたると思いました。

当然、お題の扱い方も、審査には影響してきます。
「デジタル化時代を象徴するような真相」
これは、トリックにデジタル機器を用いたもの、作品の世界観がデジタル化時代を思わせるもの、デジタルという言葉を作中に出して逃げ切るもの(笑)、使い方は全部OKです。
効果的に使えているかどうかだけです、評価基準は。

では、そろそろ発表に移らせていただきましょうか。

一応、お約束として上清水賞は最後に。
部門賞からいきましょう。


今回、さまざまな部門賞も想定したのですが、結果として賞の乱発は避けることにしました。
どうしても選び切れないことへの「逃げ」になりがちだし、八方美人的な評価姿勢もいかがなものかと考えたからです。

したがって、上清水賞以外の賞は2つだけ。

入江賞と、最優秀作品賞です。

まずは最優秀作品賞。
最も優れた作品が上清水賞でないのは、どういうわけか?
それは、この作品が物語として圧倒的な筆力と感動を与えてくれる完成度の高いものであるのですが、後ほど発表する上清水賞受賞作品の「ミステリィへの尋常ならざるこだわりと熱気」という点では、一歩譲っているからです。
それでも、この作品の輝きは群を抜いて素晴らしい。
読まれた方々の、心の奥深くまで何かが突き刺さってきたことと思います。

最優秀作品賞は、
「電気鼠の森」/「でんどうradio」chima_sさま&radio6969さま
です。おめでとうございます。

この作品に付けられた、一休さんをはじめとする数々の素晴らしいコメントを読んでいただければ、敢えて説明することもないと思います。
でも、ちょっとだけ選評の補足を。
世の中に癒し系と呼ばれるものはたくさんありますが、思うにその多くは「和み系」であり、真に癒されるものは少ないような気がします。この作品には正真正銘の癒しがありました。
大きなテーマ(ネタバレになるので書けませんが)が、まず胸をしめつけてくる。
しかし、それだけではないのです。結末部分でしっかりと明かされている「町」と「森」の真相は、ミステリィ的どんでん返しでもあり、震えるような感動をもたらしてくれるものでありました。
デジタルなバーチャルプログラム(これも激しくネタバレか?まあ、みなさん読んでますよね)が、病んだ者の心と身体を癒してくれるという要素は、極めて現代的でした。言い換えれば、デジタル化時代をまさしく象徴するような真相です。
そしてその真相は、前半部で構築された揺るぎ無い世界観があったからこそ、ともいえます。
このお2人のパートナーシップは、感性の部分でもしっかりと結びついたものだと感じました。
この作品世界の人々に、トウカの森の存在が必要であったように、

ブログ上で開催された上清水賞にも、この作品が必要でした。
参加していただいたことに心から感謝します。


さて、続いては、入江賞。
この賞は、実は作品ではなく、人物に贈られる、いわばMVPのようなものです。

これはもったいぶらずに発表しましょう。

入江賞は「鰹さん(&5人のパートナーさんたち)」です。
鰹さんが絡んだタッグチームは以下の通り。
「謎の寝台特急カシオペア!殺人事件!!!・・。そしてレールは時空を超えて不可思議を語る・・・。」/「かつ&ぢぇみ純情派・・・。(旅情編)」katuo0076さま&jemini-webさま
「回転寿司の館!殺人事件!ああ!課長さん!課長さん!さてぃ!頑張ってぃぃぃぃ!」/「でかフォント強調仁義!鰹&雀」katuo0076さま&junction25さま
「骨肉の争い?大大財閥!の闇に葬られた謎?を解け!ハッスル!ハッスル!ぐは!」/「サンバ鰹 とハッスルえばんず うっ!!」katuo0076さま&e_vansさま
「密室で事件は起き、事件に巻き込まれたわたしはあの人に連絡してみる」/poff0516さま&katuo0076さま
「極彩色の館殺人事件」katuo0076さま&uguugu333さま

鰹さんが5作を投じたこと自体もすごいことなのですが、数の多さが受賞理由ではありません。現在、エンターテインメントの世界だけでなく、あらゆるプロダクツでコラボレーションという形態が盛んです。一通りのものが出揃い尽くしてしまった状況で、新たな可能性を生み出す方法として、コラボは欠かせなくなってきています。
今回、タッグ戦という形を取り、そのコラボにおけるチームワークがポイントの1つとなりました。
チームワークといっても、2通りあります。
文体や世界観、話の流れが、まるで1人の人間が書いているかのようにスムーズなつながりを持っているもの。
もう1つは、バラバラなものが結合されることによって起こる、化学反応。ケミストリー。堂珍・川畑です。

鰹さんの場合は、ことごとく後者でした。
独自の鰹ワールドが、パートナーの方々それぞれの持つ世界(これらもまた独自で強固なものばかりでした)と融合し、1+1が3にも4にもなっているのです。
そして、あくまでも鰹ワールドを維持しながら、よく読むと無茶苦茶なようでいてミステリィとしての要素をたっぷりと詰め込んでいる。ミステリィに対する愛情が強く感じられました。
前半担当者も、後半担当者も、鰹さんと組む、ということに全力で応え、タッグとして並々ならぬパワーが生じていました。
どの作品も、上清水賞を争う有力候補作品になっていたから驚きです。
名もなき上清水賞が、ここまで盛り上がったのも、鰹さんたちの熱意とパワーによるものが大きかったのではないかと思います。



さて、さて、いよいよ上清水賞。
最初に告白しておきます。
選考段階で、上清水賞は2作同時受賞を考えていました。
乱歩賞や直木賞でも、2作受賞はあるから、まあいいだろうと。
つまり、2作品、どうしても1つに絞れなかったのです。

しかし、上清水と激短の協議の結果、やはり上清水賞を受賞するのは1作品であろう、という結論に達しました。

最後の協議で落ちたのは、
芽衣子と北斎(女と絵画のミステリィ)/「冥界大伽藍」青薔薇かをるさま&張退作さま
です。

ブログ上バーチャル作家・上清水一三六の賞である上清水賞を、同じ地平のバーチャル作家である青薔薇かをる・張退作に与えるのは、どう考えても不自然だろう、と。
ブログの世界、激短ミステリィの世界においては、このお2人は、上清水と同格のプロ作家なのです。
実在しない上清水一三六(〝中の人〟はいますが)、そしてブログ上だけで成立する上清水賞。
となれば、お2人の扱いも、やはりプロによるエキシビションととらえなければ、世界観の統一ができません。
もちろん、お2人とも〝中の人〟は実在するブロガーですから作品に対する評価はすべきだと思います。
その評価が上清水賞と同等のものだ、ということで納得していただけるでしょうか?

とにかく、読まれた方はおわかりかと思いますが、このタッグの作品は、圧倒的な「凄み」を持ったものでした。
血で摺られた春画という、冒頭の飛び切りの奇想。
後半は、メタミステリィの手法を駆使して、ともすればストーリーを理解しにくくなるまで複雑に仕掛けられた作品構造。
一応、謎は解明されても、物語的には戦慄すべきホラーとしての結末が待っている。
それぞれの作品の主人公がラストで対峙する場面の衝撃は、ビジュアルで想像すると、とてつもないものです。
作品中にトリックとして「デジタル」が出てきますが、複数のパラレルな物語が交差するという手法は、極めてゲーム的(サウンドノベルや、ADVなど)な要素を感じさせ、これもまたデジタルな時代の小説だなあとも思いました。

これは、青薔薇・張から、ライバル・上清水への挑戦状だったといえるでしょう。
「上清水賞などとえらそうなことをやっているが、その本人にこれくらいのものが書けるのか」という挑戦。
上清水、完全にシャッポを脱ぎました。


というわけでして、上清水賞は1作のみ。

発表いたします。
記念すべき第1回チキチキ上清水一三六ミステリィ文学大賞(そんな名称だったのか??)は………













「謎の寝台特急カシオペア!殺人事件!!!・・。そしてレールは時空を超えて不可思議を語る・・・。」/「かつ&ぢぇみ純情派・・・。(旅情編)」katuo0076さま&jemini-webさま
です!
この作品が受賞するのではないか、と予想されていた方も多いことでしょう。
前半でばら撒かれた数々の魅力的かつ不可解な謎。
そしてそれを見事なまでに論理的に解決した後半部。
文句なし、です。
ポーのモルグ街から始まり、ホームズへと引き継がれ、現在に至るまで脈々と流れる本格ミステリィの系譜。その系譜の中で、2004年の現在に位置するものがこの作品です。
トリックの解明(説明)も、ただツジツマが合えばいいというものではありません。
その解決を読者が知ったときに、目からウロコが落ちるような謎解きこそが、ミステリィの醍醐味といえます。
この作品では、一部、犯人の行動にリスクが高すぎるものが見受けられましたが、状況的に不可能といえるほどではありません。

野球カードの謎解き、デジタル時刻表示の扱い、見事でした。
密室トリックも普通ならショボイ解決になってしまうところですが、現実の車両システムを反映しているだけに説得力があります。
本格ミステリィが、トリックが、論理的なパズル小説が、心の底から好きだということが、ぢぇみにさんの解決部分からは伝わってきました。乱暴にいえば、小説として他のいかなる要素を犠牲にしても(犠牲になっていませんけど)王道の本格ミステリィに仕上げるのだ、という意気込みがありました。
そして、その意気込みは作品に結実していました。

こう書くと、ぢぇみにさんの力で獲ったように思われるかもしれませんが、違います。
入江賞のところでも書いたように、前半担当の鰹さんの力も絶大なのです。
無責任にネタを振ったわけではなく、ぢぇみにさん同様にミステリィへの強い強いこだわりを持っている鰹さんだからこそ、魅力的な謎を産み落とし、ぢぇみにさんのミステリィ心に火をつけたのでしょう。
絶妙のタッグチームです。

デジタルというお題も、トリックの一部としてきれいに消化されています。

「ミステリィ」という要素を除けば、その他の点では他作品のほうが優れているものもたくさんありました。

しかし、この作品が上清水賞であることが、上清水賞とはどんな賞であるのかを一番理解していただけることと思います。

参考までに上清水&激短が次点作品として評価したのは、
「闇雲館の謎」 /「小栗ばなな」midnight_eggさま&earll73さま

「A Little Mystery」/「jeNny ("Rock'n POP" hanywany & "Knocked Out" Jemini)」さま
の2作品でした。

鰹さん&ぢぇみにさん、おめでとうございました。
そして、参加していただいた、のべ40人のミステリィ作家のみなさん、本当にありがとうございました。

名も無いブログのお遊び企画としては、分不相応なほどの力のこもった作品があつまり、感無量です。

この20作品が1冊の本にまとまったとしたら、どんなアンソロジーをも凌駕する傑作短編集になるでしょう。

第2回が開催されるかどうかは、今のところ未定です。
が、もし開催されることになったあかつきには、また、今回以上の力作をお待ちしております。

            上清水一三六
            激短ミステリィ
            
P.S.青薔薇かをる&張退作の覆面タッグチーム、正体当てコンテストの正解者発表は、
また改めて。
P.S.P.S.ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、プロのミステリィ作家である司凍季先生が、上清水賞記事にトラックバックしてくださいました。参加作品も読んでいただいているかもしれません。すげえっ!
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by kamishimizu136 | 2004-10-06 18:35
上清水賞まずは各作品の選評を。
お待たせしております。
上清水賞、どうやらやっと受賞作品を決定できそうな状況になってきました。

結果発表の前に、激短ミステリィの方で各作品への寸評を先行公開しておりますので、そちらをどうぞ。
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by kamishimizu136 | 2004-10-06 13:12
上清水一三六の危機・解決編
上清水一三六の危機・事件編/激短ミステリィ



「・・・というわけなんですよ。上清水先生」

「なるほど。わかりました金原警部。この奇妙な殺人事件に私の頭脳を借りたいというわけですな。幸いK君も知り合いだし、私も常日頃からこういう現場でのフィールドワークを得意としてますから・・」

「火村教授ですか。あなたは!」

「おや?誰かと思えば入江君じゃないか。こんなところで何をしてるんだね」

「何言ってるんですか。締め切りを10日も過ぎてるっていうのに、警察に呼ばれたからってホイホイ出ていっちゃうんだから。このまま逃げられたら大変だから見張ってるんですよ」

「逃げるとは人聞きの悪い。私は一国民の当然の義務として警察に協力してるんだ」

「だいたい先生にこの謎が解けるんですか?」

「私の、ポアロの灰色にもまさる黄金の脳細胞をなめてもらっちゃ困るね」

「黄金って、しわがなくてツルツルみたいじゃないですか」

「黙らっしゃい!私にはもう今回の謎は解けている」

「えっ、本当ですか?ウェットスーツとポップコーンとシャム猫の謎がですか?」

「もちろんだ」

「じゃあ教えてくださいよ。ウェットスーツはどういう意味が?」

「今、というかちょっと前にウェットスーツで流行ったものがあるだろう」

「えっ何ですか?」

「『海猿』だよ『海猿』。あれはなかなかいい映画だった」

「はあ。それで?」

「海猿と言えばライフセーバー、海上保安庁だ」

「・・・それが何か?」

「これだけではわからないさ。謎はすべてリンクしているんだ」

「ではポップコーンは?」

「君は甲斐バンドの名曲、『ポップコーンをほおばって』を知らんかね?」

「まあなんとなく」

「ポップコーンと聞けば間違いなくその歌を思い出すもんだ」

「・・・・・それではシャム猫は?」

「シャム猫と言えば100人中99人は、金持ちの老人が椅子に座りガウンを着て右手にブランデーが入ったグラスを持ち左手で膝の上に乗せたシャム猫を撫でている場面が頭に浮かぶだろう」

「それは確かにそういう気もしますが、それじゃあ結局どういうことになるんですか?犯人は誰なんです?」

「今のを合わせれば簡単だ。犯人は、昔海上保安庁にいて、あるとき海底に眠っていた財宝を見つけて大金持ちになった甲斐よしひろだ!」

「・・・・・もうつっこむ気力もありませんよ」

「んっ、どこかおかしいかね?そうか、動機が弱いか」

「そういうことじゃなくてですね。・・まあいいです。それより僕にはこの事件の全貌が見えましたよ」

「何本当かい。是非教えてくれたまえ」

「ちょっと金原警部。解決すれば誰でもいいのかね」

「だって早く帰りたいんですよ」

「まったくしょうがない警察だな。では入江君。どうせ間違ってるだろうが一応話してみたまえ」

「はい。これはいわゆる物取りの犯行だと思います」

「ほお。どういうことかね」

「犯人はK先生が外出した間に室内に入り込みます。そして金目のものを物色していた。しかしいつ帰ってくるかわからないので、そのための予防線を張った」

「というと」

「まず猫が暴れると困るし先生が帰って来たとき鳴かれても困るのでトイレに閉じ込めておきます。本当は声を出さないように猿ぐつわをしてたんだと思いますよ。ただ猫が暴れてずれた結果目隠しになっちゃったんでしょう。次に、入ってきたときにすぐわかるようにポップコーンを敷き詰めておきます。踏めば足音がしますからね。忍者屋敷に枯葉が敷き詰めてあるのと同じです。しかし、結果的には、物色に熱中していて気づかなかったんじゃないですか。鉢合わせして驚いて殺してしまいそのまま慌てて逃げたというわけです」

「ウェットスーツを着ていたのはなぜだね」

「それはそのままです。先生が外出してたのは海にサーフィンをしに行ってたんでしょう。ここは海のすぐ近くですからね。K先生がサーフィンが趣味で気晴らしによく海に行くって話を聞いたことがあります。近いんで着替えずにそのまま戻ってきただけだと思いますよ」

「なるほど。楽しくご拝聴させてもらったよ。しかし疑問があるねえ」

「なんですか?」

「家主が帰ってくるのがわかるように注意するという発想はわからないでもないが、では実際帰ってきたのがわかったらどうするんだね?」

「それは・・」

「どこかに隠れるのかね?それでは人がいる間は出られないしいつ見つかるかもわからない。窓から逃げようにもここは5階だ。ちょっと無理だろう。つまり、帰ってくるのがわかったところで、それは部屋に入ってからの話なのでその時点では何もできないのだよ。どうせなら今流行りの居直り強盗になって暗唱番号を聞き出すとかする方がよっぽど合理的だ。違うかね?」

「・・・確かに先生のおっしゃる通りです。意味がありませんね」

「所詮素人のあさはかな推理だからやむを得まい。まあよく考えた方だよ。ハッハッハ」

「確かにおっしゃる通りですけど、あんたにそんな偉そうなことを言われる筋合いはなーい!」

入江のシャイニングウィザードが火を吹き上清水は吹っ飛んだ。

「あっ、ちょっとやりすぎちゃったかな。先生、大丈夫ですか?」

上清水はしばらく倒れていた。が、やがて立ち上がるとゆっくりと室内を見回した。

「金原警部」

「は、はい」

「謎はすべて解けました」

「えっ、本当ですか?」

「またまた先生。どうせくだらない・・ハッ!め、眼の色が違う!」

そこにいたのはいつものボケボケの上清水一三六ではなかった。

「それでは説明しましょう。この事件のポイントはそこです」

そう言うと上清水は壁際にあるテレビの上方1メートルくらいの場所を指差した。

「こ、これは・・・」

そこにはテレビから延びているケーブル・アンテナが通っていたが、それは途中で断線していた。

「それがこの事件の始まりです。あと、現場に懐中電灯が落ちていませんでしたか?」

「ああ確かに。でもなぜそのことを上清水先生が・・?」

「それでは最初からお話ししましょう。昨夜Kはここで仕事をしていた。しかし一人ではなかった。そしてその人間は何らかのトラブルによりKを殺したいと考えていた」

「ではこれは計画的な犯行だと・・」

「いえ、そうではありません。殺したいと考えていてもなかなか実行に移せるものではありません。特に実際に相手に手をかける殺し方は。今回のはある意味衝動的な殺人でしょう」

「わかりました。続きを」

「昨日の夜二人でいたときにあることが起こりました。テレビが映らなかったのです。恐らくネズミが齧ったかなにかでケーブルが断線したんだと思います」

上清水はケーブルの方をちらっと見た。

「仕方なくKはそれを直すことにした。切れたケーブルをつなごうと。そのとき、一緒にいた人間、仮にAとしましょう。Aはあることを考えた。このまま感電して死なないかなと」

部屋の中に緊張が走った。

「そしてさらに、感電死ということなら事故で片付くのでそれを補強してやればいいと思ったのです」

「Kは修理をするための工具を隣の部屋に取りに行った。その間にAは犯行計画を考えました。確実に感電死させるためにはどうすればいいか。まずAはKが修理をするときに立つであろう場所に水をまきました」

入江がつばを飲み込む音が響いた。

「次にその場にポップコーンをまいたんです」

「なんのために?」

「これは、確実に殺すためにAが考えた苦肉の策です。水だけでうまく通電しなかったときのことを心配して、電気を通りやすくすることを考えた。塩も電気を通すでしょう」

「塩?・・まさか!」

「そうです。ポップコーンには大量の塩がまぶしてある。本当は食塩をそのまま使いたかったんでしょうが、ここは仕事場だったのでそんなものはなかった。そこで代替品として、置いてあったポップコーンを使ったんです。まあ、あまり意味のある行為ではないですがAはそれだけ必死だったということですね」

「それで?」

「ここでAは考えました。感電させる仕掛けを施したのはいいが、これではKが戻ってきたら不審に思われる。見せないようにしなければならない。Aは隣にいるKに呼びかけました。『作業中に感電すると危ないのでブレーカーを落とすから懐中電灯を持ってきて』と。そしてすぐにブレーカーを落としに行きました」

上清水が語るバックにエアコンの音だけが響いている。

「これで仕掛けを見られないですむ。あとはKがその場に立ったときに電流が流れるものを置くだけでいい。ところが暗闇の中で光るものに気づきました。そう、シャム猫の目です。その光で周りが見えてしまうことはないにしても、猫好きのKが気をとられるかもしれないし猫が落ちてるポップコーンを食べにきてKが気づくかもしれない。Aは猫に目隠しをし、結局それでも不安になったのでトイレに閉じ込めたんでしょう。不確定要素は少しでも取り除くために」

「そしてKがこちらの部屋に戻ってきました。懐中電灯を持って故障箇所を照らしているのでもちろん足下は見えません。そしてその場に立ったとき、期せずしてさっき入江君が言ったようにポップコーンを踏みつぶす音でわかったんでしょうが、Aは電気を帯びたものを足下に投げました。火花が飛び散りKは悲鳴をあげ倒れました」

「感電死だったんですか?しかし・・・」

「いえ。感電死ではありません。ただ、身体に電気を帯びていることは確かです。調べればわかるでしょう。Aも当然感電死したものと思いブレーカーをあげて電気をつけました。しかし、そこで倒れていたKは・・・ウェットスーツを着ていたんです」

「・・?」

「私が知っているかぎりKは超のつくほどのビビり屋です。電気系統の故障箇所の修理をするときにウェットスーツを着ても不思議ではありません。隣の部屋に行ったのは工具よりむしろその準備だったんだと思います。当然、手には手袋を足には靴下くらい履いていたでしょう。結果、Kは感電して気を失ったものの死には至りませんでした。驚いたAはとりあえずKをソファーまで引き摺ってきてやむなく手許にあった文鎮で殴り殺したというわけです。あとは動転したまま逃げた」

「・・・なるほどよくわかりました。すると犯人は昨日一緒にいた編集者ということですね?」

「いや。もし編集者だったら、故障箇所の修理なんか先生にやらせないで自分でやるでしょう。K自らがやったということは、それより弱いか小さいもの、子供か女性ということになる」

「・・・・わかりました。おい、Kの女関係を洗え!」

警察の関係者は金原警部を先頭に慌ただしく出ていった。

「先生。見直しました。先生にこんな推理能力があるなんて」

「入江君。こんなことはたいしたことない、瑣末なことだよ。Aは仕掛けを見られないように部屋を暗くしたばかりに逆にKの姿を見失って失敗した。恐らく懐中電灯の明かりでは顔の部分しか見えなかったんだろう。アナログからデジタルにコンバートするときに上下左右が真っ黒になるようにね。皮肉なものだ・・・・・んっ?」

「先生、どうしました?」

「・・・私は何をしてたんだ?よく覚えとらん」

「えっ?」

「なんか夢でも見ていたような・・」

「眠りの小五郎かい!どこかにコナン君でもいるのか?もう一回寝てなさい!」

「ちゃんちゃん」

            完
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by kamishimizu136 | 2004-10-03 21:06


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