上清水一三六、慟哭す
「入江君。素晴らしいアイディアが浮かんだよ」
「なんです、今度は」
「これなら本の売上が倍増だぞ」
「またまた胡散臭いですねえ」
「いや、まあ聞きたまえ。とりあえず1000ページくらいの大長編を書くわけだ」
「とりあえずって・・それで?」
「もちろん内容はワクワクドキドキの極上ミステリーだが、結末・犯人は書かない」
「ネットででも公開するんですか?」
「そうじゃない。本編内では書かないと言ってるんだ」
「じゃあ、どこでです?」
「表紙の裏だよ」
「カバーの内側ってことですか?」
「違う違う。見返しの裏というか表紙の中だよ」
「・・・表紙の中?・・糊付けしてあるじゃないですか」
「そうだよ」
「それじゃ、見られないでしょう」
「表紙を剥がせば見られるだろう」
「・・・ムチャな・・」
「バカだな、入江君。それが作戦なんだよ。面白い大長編を読んできた読者は絶対にその結末を知りたいだろう。そうしたら表紙を剥がしてでも読むさ。しかし、当然のごとく本はボロボロになる。そうすると読者は?」
「もう一冊買う!?」
「その通り!どうだね、この戦略は?」
「なるほど。それはいいかもしれませんねえ」
この驚天動地の企画はすぐに通り、史上初の、結末が表紙の内側に書いてある小説は本屋の店頭に並んだ。
作品自体がまったくつまらなくしかも無駄に長かったために、読んだ読者の大半が途中で読むのを止めて結末を待たずに放り出すことになるのを二人が知るのはもう少し後のことだった。
《END》
「なんです、今度は」
「これなら本の売上が倍増だぞ」
「またまた胡散臭いですねえ」
「いや、まあ聞きたまえ。とりあえず1000ページくらいの大長編を書くわけだ」
「とりあえずって・・それで?」
「もちろん内容はワクワクドキドキの極上ミステリーだが、結末・犯人は書かない」
「ネットででも公開するんですか?」
「そうじゃない。本編内では書かないと言ってるんだ」
「じゃあ、どこでです?」
「表紙の裏だよ」
「カバーの内側ってことですか?」
「違う違う。見返しの裏というか表紙の中だよ」
「・・・表紙の中?・・糊付けしてあるじゃないですか」
「そうだよ」
「それじゃ、見られないでしょう」
「表紙を剥がせば見られるだろう」
「・・・ムチャな・・」
「バカだな、入江君。それが作戦なんだよ。面白い大長編を読んできた読者は絶対にその結末を知りたいだろう。そうしたら表紙を剥がしてでも読むさ。しかし、当然のごとく本はボロボロになる。そうすると読者は?」
「もう一冊買う!?」
「その通り!どうだね、この戦略は?」
「なるほど。それはいいかもしれませんねえ」
この驚天動地の企画はすぐに通り、史上初の、結末が表紙の内側に書いてある小説は本屋の店頭に並んだ。
作品自体がまったくつまらなくしかも無駄に長かったために、読んだ読者の大半が途中で読むのを止めて結末を待たずに放り出すことになるのを二人が知るのはもう少し後のことだった。
《END》
by kamishimizu136
| 2007-01-26 11:36